予防美容とは、トラブルが起きてから
元に戻そうとする美容ではなく、
トラブルが起きにくい「環境」を、
時間をかけて整えていく美容である。

ここで言う環境とは、髪と頭皮が置かれている状態のことです。
施術のあとに残っているもの、水道水から入ってくるもの、
紫外線や熱にさらされる日々。そのすべてを含めて「環境」と呼んでいます。
髪そのものを直そうとするのが対処美容だとすれば、
髪が置かれている場所のほうを整えるのが予防美容です。
対象が違う。
だから、時間の使い方も、評価のしかたも変わります。
なぜ、いまこの言葉が必要なのか
私は四十年ほど、この仕事をしてきました。ロンドンで技術を覚え、
表参道を経て、四十五歳で銀座に店を戻し、いまも現場に立っています。
その中でずっと引っかかっていたことがあります。
この業界の商売は、髪が傷むほど成り立ってしまう。
傷んだからトリートメントを売る。色が抜けたからまた染める。
乾燥したから買っていただく。悪くなることが、次の売上になる。
誰が悪いという話ではありません。ただ、構造としてそうなっている。
私はそこに、ずっと居心地の悪さを感じてきました。
医療の世界では、この転換はすでに起きています。
病気になってから治す医療から、病気になりにくい体をつくる予防医学へ。
人間ドックも、生活習慣の指導も、いまでは当たり前です。
美容だけが、まだ「起きてから」に留まっている。
この順番を入れ替えたい。
それが、予防美容という言葉に込めた意味です。
四十代・五十代が教えてくれること
「以前と同じメニューなのに、仕上がりが違う」
——四十代、五十代のお客様から、いちばん多く聞く言葉です。
これはダメージが増えたという話ではありません。
髪の置かれている環境が、少しずつ変わってきたということです。
積み重なった施術履歴、白髪染めの周期、水、熱、時間。
ここに向き合わずに補修成分だけを足しても、その場の手触りしか変わりません。
翌日と、二週間後に差が出ます。